モネは1896〜1897年の間、朝早くに起きて《セーヌ河の朝》シリーズの制作を行いました。この連作は、夏の朝の、霧の立ちこめるジヴェルニー付近のセーヌ河を描くにあたって、装飾効果やおびただしい数の色彩を導入したことで知られています。本作品は、《セーヌ河の朝》シリーズの他の作品と同様、セーヌ河沿いの特定の場所から、朝の決まった時間に描かれました。柳は川の水面に垂れ、波は草むらを洗い、変わりゆく自然の形が、モネの活き活きとした筆遣いと調和しています。筆の動きは、枝葉や波の間を動く風を真似ていますが、それと同時に、移り変わる自然の形を一瞬にして捉えようとするモネの試みに漂う緊張感を、直に伝えています.




セーヌ河の朝
油彩、カンヴァス • 91.5 x 73 cm