観客 by Honoré Daumier - 1856~1860年頃 - 32.7 x 23.6 観客 by Honoré Daumier - 1856~1860年頃 - 32.7 x 23.6

観客

油彩、板 • 32.7 x 23.6
  • Honoré Daumier - February 26, 1808 - February 10, 1879 Honoré Daumier 1856~1860年頃

オノレ・ドーミエは、フランスの版画家、風刺画家、画家、彫刻家であり、その作品の多くは、19世紀フランスの社会生活や政治界に対して物申すものです。当時おそらく最もよく知られていたのは、政治家の風刺画と同郷の人々の行動を皮肉った作品ですが、死後、絵画作品の価値も認められるようになりました。画家としてのドーミエは、現実的なものを描いたパイオニアの一人ですが、非常に主観的な視点から題材を扱っています。演劇の世界に深く魅了されたドーミエ。大道芸人、舞台裏の風景、観客のブルジョワたち、そして舞台上で上演されるシーンを、巧みなタッチのリトグラフや油彩で描いています。暗い桟敷席から眩い舞台を覗くというモチーフのリトグラフは、1852~1864年にいくつか作られました。リトグラフでは人々の歓喜や退屈さをはっきりと表現していますが、この油彩画では人物をシルエットを描いているため、その表情はほとんど見えません。黒服の一団は、左側前方に描かれた桟敷席の前列がなす豪華な背景と対比させられています。観客は、細部まで入念かつ簡潔なシルエットのみで描かれています。こういった表現には、ドーミエが人物のポーズや表情を研究したこと、そして人々の社会的地位、性格、感情を徹底的に理解したことが反映されています。ドーミエは現代生活という比較的新しい主題を取り上げ、幅広の筆致で描かれたシルエットや細部の省略を用い、限られた色数で微妙なニュアンスを描き出しました。ドーミエの作品は後に、マネやドガに大きな影響を与えました。