「その人の見た目は?」という問いへの答えが最初に出たのは、アクエンアテンが治めるエジプトでのこと。顔をもっとありのままに表現することが一般的になったのです。ですが、それも写真が発明されるまでは、常に芸術家の解釈によって左右されてきました。進歩の結果、1839年に初めて肖像写真が生み出されました。ジョン・ウィリアム・ドレーパーは、たくさんの「初めて」を経験した人でした。1811年、イギリスでメソジスト派の父のもとに生まれたドレーパー。1831年に父が死去するまで、家族と一緒に各地を転々としながら、科学、歴史、哲学、化学、そして写真という新しいものを多く学びました。その後は、メソジスト系の大学講師になることを夢見て、アメリカに渡りました。
ドレイパーは、ニューヨーク医科大学を創立したアメリカ化学会の初代会長となり、写真界では光化学第一法則(Grotthuss–Draperの法則)という、写真の基礎となる法則の一つを生み出しました。いくつか発明品を生み出すのにも貢献しましたし、ダーウィンが考案した事柄の一部についても著述を残しています。1840年には、月をフルフレームで初めて撮影し、同時期にこの写真を生み出しました。ここに写っているのは、控えめなボンネットを被った女性です。「この人、誰に見える?」という問いへの答えは「ドロシー・キャサリン・ドレーパー」、ジョン・ドレーパーの姉です。この写真もまた「世界初」の一つであり、女性の顔の全貌をそっくりそのまま表した、初の肖像写真です。また、露光時間65秒の写真としても、おそらくアメリカ初のものでしょう。ジョンはきっと、「これが、これこそが姉の見た目だ」と言ったことでしょう。焼き増しされたもののうち、1枚はジョン・ハーシェルが所有することとなりました。
- Erik