10月1日までサンパウロ美術館では「Toulouse-Lautrec em vermelho (ロートレックの赤)展」が開催されています。キャバレーやカフェ、コンサートホール、売春宿などでのパリっ子のナイトライフや、売春婦やボヘミアン、踊り子などの姿を描いた、ロートレックの代表作を見ることができます。
今日ご紹介する作品は、ロートレックが1890年代半ばによく通った高級売春宿ルー・デ・ムーランの玄関の待合室を描いたものです。赤いベルベットを貼った高い背もたれのソファなど、この待合室の装飾はこの展覧会のタイトルを想起させますが、同時に赤という色は性と悦楽をも連想させます。
ロートレックはパリ北部のボヘミアン地区モンマルトルに熱心に通った人物の一人でした。そこは、パリを優美で整った市街へと作り変えたジョルジュ・オスマン知事 (1809年–1891年)の市街改造計画を免れた区域でした。ロートレックは売春宿とキャバレーを昼夜問わず自由自在に行き来して、そこの支配人たちや従業員たちと信頼関係と友情を築き上げました。それが、彼らの生活に対する道徳的偏見から離れた心のふれあいに根ざした、独自の視点を彼の作品に生み出したのです。