この絵画を見た時、私はただただ「うわあっ」と叫びました。右側に描かれたタイタン (ティーターン) の後ろ姿が、私の目を完全に蹂躙したのです。マニエリスムの世界へようこそ!
古代ローマの詩人オウィディウスが書いた『変身物語』には、タイタン族やサイクロプス族、ゼウス率いるオリンポスの神々が引き起こした全宇宙の戦いに挑んだ巨人族など、頂点に君臨した神々の物語が書かれています。
ティターノマキアーと呼ばれる激しい戦いはタイタン族の敗北に終わり、彼らはゼウスによって奈落であるタルタロスに投げ込まれました。タイタン族はそのタルタロスから、地震や火山の噴火を引き起こしているのです。
コルネリス・ファン・ハールレムは、芸術に関するあらゆる理想を、この筋肉質な裸体と複雑なポーズに注ぎ込みました。ヌードをもとにスケッチを描くことは、17世紀後半になるまで一般的ではありませんでしたが、カレル・ヴァン・マンデル (1548-1606) が設立した美術学校では、研究としてヌードを練習に用いた上、芸術理論についての議論も行われました。
結果としてこの絵画は、ハーレルムのマニエリストとしての作風を表す一例となりました。マニエリスムとは、ルネサンスとバロックの合間に生まれた、人工的なものと官能的なものを賛美する様式のことを指します。この様式は、神聖ローマ皇帝ルドルフ2世 (1552-1612) のプラハの宮殿などで培われたもので、北へと伝わるにあたって、デンマーク王クリスチャン4世 (1557-1648) などの王族たちを魅了しました。《打ち負かされるティーターン》は、このデンマーク王によって1621年に購入されたオランダ絵画のうちの一つです。