ボレアス by John William Waterhouse - 1904年 ボレアス by John William Waterhouse - 1904年

ボレアス

油彩、キャンバス •
  • John William Waterhouse - April 6, 1849 - February 10, 1917 John William Waterhouse 1904年

「ボレアス」は、ギリシャの北風の神にちなんでつけられました。激しい風に吹かれる少女を描いています。1904年のロイヤル・アカデミーの記録には、次のように残されています。「くすんだ色や青色の厚手のドレープは風に吹かれ、少女はピンクの花やラッパスイセンで彩られた春の景色の中を通り抜ける。」この絵は90年間も行方不明だったのち、1990年半ばに売りに出されました。それは美術界にとって大きな衝撃でした。

ウォーターハウスの意図するところかは定かではありませんが、はるかに暗い、元々のギリシャの物語は考慮されるべきでしょう。北風の神であるボレアスは、古代アテネの王エレクテウスの娘、オーレイテュイアに好意を拒まれました。ためらいもなく、力尽くで彼女を奪うと決めたボレアスは、彼女が花を摘んでいるところを誘拐しました。アイスキュロスは「オーレテュイア」と呼ばれる、その誘拐についての戯曲を書きましたが、それは残されてはいません。このようなテーマは神話にはありふれています。

プラトンはその伝説について「パイドロス」の中で議論しました。ソフィストは「オーレイテュイアは北風が突然吹いた時、川の岩の上で殺されたのだろう。ゆえに彼女は“ボレアスに奪われた”と言われているのだ」と主張している、とソクラテスが指摘するところです。ソフィストら“自然主義者”のあらゆる神話生物に対する説明は、圧倒的で、時間の無駄だとして、ソクラテスはソフィストの味方にはつきませんでした。「私は一般的に信じられていることを受け入れる。そして私は彼らの中ではなく、私自身の中を見つめようとしている。」大義として汝自身を知れというデルフォイの神託を受けたソクラテスは、そのようなくだらないことに使う時間はなかったのです。

それでもなおこの絵は、風に吹かれる若い女性と、ドレープの風になびく様子が際立った肖像画です。彼女はその風を受け入れているのか、拒んでいるのか、いずれにしても。ラファエル前派は、マニエリスムの画家がラファエロやミケランジェロに倣って用いた機械論的な方法を受け入れませんでした。彼らは各々の個性を発展させようとし、また、詩と絵画のつながりをつくろうと試みました。ラファエル前派のそういった運動は、中世文化にも影響を受けていました。彼らはルネサンス運動で失われた過去の精神性・創造性を追求していたのです。

ウォーターハウスは1849年、ローマのイギリス人画家の家庭に生まれました。1854年、一家はロンドンへ戻り、彼はそこで進路を見つけます。彼はよく、大英博物館やナショナル・ギャラリーの作品をスケッチしていました。1871年にロイヤル・アカデミーに入会するとすぐに、アカデミーの夏季展覧会で彼の作品が展示されました。彼の初期作品の多くは、大きなキャンバスに、日常風景や古代ギリシャ神話といった古典的なテーマを描いた作品です。

- Clinton Pittman

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