メキシコ湾流が渦巻く海上を舞台にしたウィンスロー・ホーマーの壮大な作品に描かれているのは、サメと迫りくる暴風雨の只中、窮地に陥ったボートの上で来るべき運命に抗う一人の黒人の姿。これは、ホーマーが画家としてのキャリアを通して取り組んできたテーマ、とりわけ人間と自然界の間の緊張という主題を扱った集大成とも言える作品です。
アメリカで人種差別の状況が最悪と言われた20世紀初頭に制作された『メキシコ湾流』には、地政学的に深い意味合いが込められています。ホーマーが絵に特別な含意を持たせることで示唆したのは、アメリカの帝国主義的願望の高まり。デッキに散らばるサトウキビの茎は、帝国の経済的枠組みにとって極めて重要なカリブ海の役割を象徴していると同時に、貿易を円滑に促進する一方で、大西洋をまたいだ奴隷制の残酷な歴史とも不可分な関係にある海流とも直接的に結びついています。ホーマーは、このように複雑な歴史的物語を緻密に融合させ、無慈悲な自然の力に対する人間の生命力と回復力を表現したのです。
今日は世界海洋デー。世界共通の資産である海、海と人々とのつながり、そして私たちの生活に海が果たす重要な機能への関心を高め、その保護について考える日です。今日の作品を気に入っていただけましたでしょうか。
P.S. 「海、船、海岸のポストカード50枚セット」には、ウィンズロー・ホーマーの別の海景図が含まれています。デイリーアート・ストアでチェックしてみてください。素敵な海の風景が満載ですよ!
P.P.S. 兵士からはしゃぐ小学生、ニューイングランドの漁村まで、アメリカの画家ウィンスロー・ホーマーの芸術を探索してみましょう。