今日紹介するラッヘル・ライスの作品は、植物画を描く卓越した腕前が発揮された、オランダ黄金時代の静物画の見事な好例です。画家としての絶頂期に制作されたこの絵は、花の繊細な美しさを細部にわたる写実的な描写で捉えることができるライスの技量の証でもあります。
バラ、チューリップ、アヤメなど、丁寧に描かれた鮮やかな花々があふれるガラスの花瓶。本物そっくりに見える花は色と質感に微妙なバリエーションがあり、それが花のはかなさを表現しています。カンヴァスから飛び出しそうに精緻に描かれた花びら、葉、茎。ライスの表現力は他の追随を許しません。
ライスの絵は単なる花の描写に留まらず、自然への賛歌であり、彼女の並外れた画力の発露でもあります。その作品にはオランダ黄金時代を特徴づける自然への憧憬と科学的知識の追究が反映されていると同時に、静物画に通底するテーマである、はかなさと生命の束の間の美しさが表現されているのです。
P.S. オランダ黄金時代は男性に関連づけて語られるのが常ですが、ラッヘル・ライスのように成功した女性画家の存在も忘れてはいけません。オランダ黄金時代の傑出した10人の女性はこちら!この時代の美術に詳しい方は、オランダ黄金時代クイズに挑戦してみましょう!全問正解できるでしょうか。