ジュリエットと乳母 by Joseph Mallord William Turner - 1836年 - 88 x 121 cm ジュリエットと乳母 by Joseph Mallord William Turner - 1836年 - 88 x 121 cm

ジュリエットと乳母

油彩/カンヴァス • 88 x 121 cm
  • Joseph Mallord William Turner - 1775 - December 19, 1851 Joseph Mallord William Turner 1836年

ジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナーが『ジュリエットと乳母』で描いているのは、滞在先のホテル・エウロパの屋上に近い、新行政館の西端上方から見たヴェネツィアのメイン広場とその東側のランドマークを見渡す眺望。中央に見えるサンマルコ寺院と鐘楼は、この世のものとは思えないような白塗りのドームと、赤レンガの塔が対照を成しています。右側に見えるのは、やや圧縮されて描かれたドゥカーレ宮殿の上層部。その右手のほっそりとした円屋根を持つ建物はゼッカ(造幣局)です。ゼッカの奥の2本の縦の線が示唆するのは、サンマルコ小広場にある、有名な獅子と聖テオドールの円柱。 何艘もの舟が浮かぶリーヴァ・デッリ・スキアオヴォーニが遠くまで延び、パッラーディオが設計したサン・ジョルジョ・マッジョーレ聖堂近くの大型船の上空では花火が上がっています。

広場ではカーニバルの参加者たちが音楽や人形劇を楽しみ、カッフェ・フローリアンのそばには花火を見物する人々。花火に照らし出された夜を舞台に、お祭り騒ぎとそこで繰り広げられるドラマが描かれています。ターナーはこれらの効果を用いることで、オーストリアの支配下にあったヴェネツイアの過去の栄光と現代のロンドンとの類似性を描こうとしたのではないかと考える研究者もいます。作品のタイトルはシェークスピアの『ロミオとジュリエット』を引用していますが、祝祭の広場はキャピュレット家(訳注:ジュリエットの家名)の舞踏会の代わりであるかのようです。ターナーの芸術的選択とヴェネツイアの描写の不正確さまでも擁護したのは、後に著名な美術評論家となった若き日のジョン・ラスキン(1819–1900)。ターナーの画業後半の最も印象的な作品の一つである本作に、大気の効果を捉え、ダイナミックな遠近法を駆使する画家の腕前が遺憾なく発揮されていることは、絵が雄弁に物語っています。

P.S. J. M. W.ターナーはロマン主義の最も重要な画家の一人。アート好きなら見逃せません。ターナーの代表作10点を見てみましょう!