ジョゼット・グリスの肖像 by Juan Gris - 1916年 - 97 x 140.5 cm ジョゼット・グリスの肖像 by Juan Gris - 1916年 - 97 x 140.5 cm

ジョゼット・グリスの肖像

油彩/板 • 97 x 140.5 cm
  • Juan Gris - March 23, 1887 - May 11, 1927 Juan Gris 1916年

キュビズムは伝統的な芸術運動からは乖離した、完全な抽象と思うかもしれませんが、事実はそうではありません。ピカソは先人から多くを採り入れましたが、スペインのもう一人の抽象画の巨匠フアン・グリスも同様です。

画家の妻ジョゼット・グリスを描いたこの油彩画は、キュビズムの重要な作品。過激な実験から、伝統的絵画との連続性を探るという方向への転換を意味する変化は、第一次世界大戦中のフランスの政治情勢に影響を受けたものでもありました。 

特に1916年以降、コローやセザンヌらの画家からインスピレーションを受けるようになり、過去の作例の再解釈に取り組んだグリスの作品には、伝統的主題への回帰が顕著に表れています。グリスが、コローが描いた人物の一人を直接模倣してジョゼットのポーズを決めた可能性は低いものの、彼女の姿には、ピカソが時折り用いたような日常的なシンプルさと共通するものがあります。シャルダンの静物画からコローの農婦やセザンヌの風景画まで、フランス絵画の伝統の再解釈は、スペイン黄金時代の画家たちに影響を受けた一人のスペイン人画家としてのグリスに美術史家が抱くイメージへの挑戦でした。むしろ美術史家は、第一次世界大戦の戦中・戦後に台頭したナショナリズムに形作られた、フランス的伝統の進化の文脈の中にグリスを置いています。

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