木炭とチョークで念入りに描かれたこの肖像画のモデルは、数多くのラファエル前派の画家のモデルを務めた混血の女性、ファニー・イートンとされています。1835年にジャマイカで生まれたイートンは、まだ小さい頃に母親と共にイギリスに移住。乗合馬車のオーナー兼御者だったジェームズ・イートンと結婚し、最初の子供をもうけた後(夫婦の間には10人の子供がいました)、王立美術アカデミーでモデルの仕事を始め、ロセッティなどの著名な画家の作品にその姿が描かれるようになります。1881年に夫が亡くなるとお針子として生計を立て、後年は家政婦として働いた彼女は、老衰と意識消失により88歳でこの世を去りました。
ロセッティはこの絵で顔貌と首を強調し、穏やかな表情で静かに内省する様子を捉えています。
P.S. ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティは、時代を超えた女性の肖像画で知られています。ロセッティのミューズに関するストーリーはこちら!