松の樹の後ろから昇る月 by Carl Gustav Carus - 19世紀 - 10,2 x 8 cm 松の樹の後ろから昇る月 by Carl Gustav Carus - 19世紀 - 10,2 x 8 cm

松の樹の後ろから昇る月

油彩/板 • 10,2 x 8 cm
  • Carl Gustav Carus - 3 January 1789 - 28 July 1869 Carl Gustav Carus 19世紀

デイリーアートが、Appleの2024年度 App Store Awardを受賞したことをお知らせします!Appleでは毎年、App Storeでその年最もインパクトがあり、優れたアプリやゲームを表彰しており、私たちは、その中のカルチャー・インパクト部門を受賞しました。詳しくはこちらをご覧ください。皆さんの日頃のご支援に改めて感謝申し上げます。お蔭さまでこのような素晴らしい賞をいただくことができました!

今日紹介するカール・グスタフ・カルスの夜景画に描かれているのは、松の樹の後ろから昇る満月の幽玄の美。それは、ドレスデンのロマン主義の画家たちが繰り返し取り上げたモチーフです。カルス自身の言葉を借りれば、澄み切った夜空の「暮れなずむ青」が水晶のような明度を保ち、赤みがかった光の環が「淡い黄金色」の満月をそっと包んでいます。ギザギザした松の木のピラミッド型の王冠のようなシルエットが、月明かりに照らされて青みがかった空と際立ったコントラストを成し、月の穏やかな輝きを表現するのは、前景の樹々をわずかに照らす光。画家が選択した低い視点と、モノクロームを基調とした色遣いで表現された強いコントラストが、作品の小ささと主題を超越した感情的深みを生み出しています。画家としてのキャリアを通じて月光をモチーフにした作品を数多く制作したことは、夜景と月明かりの情景に対するカルスの情熱を裏付けています。しかし、今日の作品のように、小さく限られた画面でこの主題を表現したのは稀でした。 

1814年にドレスデンに居を定めると、カルスはカスパー・ダーヴィト・フリードリヒと親しくなり、フリードリヒを取り巻く画家グループの中心的人物になりました。フリードリヒは月光をロマン主義絵画の主要なテーマに押し上げ、それがカルスに与えた影響は明らかです。1820年代になるとフリードリヒのグループからは距離を置くようになりましたが、フリードリヒの絵画技法と構図の取り方は、その後もカルスに影響を残したようです。フリードリヒの死後、その功績についてカルスはこう記しています。「彼の作品を特徴づける、光の純粋な集中に対する際立った感性は、私にとって重要な意味を持つものでした」光と大気に関する深い洞察力は、月明かりを主題としたカルスの風景画ならではの特徴であり、科学的観察眼にロマン主義的理想を融合させた画家の力量を示しています。

P.S. ロマン主義的理想と言えば。。カスパー・ダーヴィト・フリードリヒの代表作の高精細複製画をデイリーアート・ストアで購入できることをご存知ですか?

P.P.S. 画家たちは様々な形で満月を描いてきました。満月の絵を幾つか見てみましょう。